( 株)サンギの副社長であるロズリングさんとの対談


がんばらばらなくても大丈夫!

子どもの心が育つ『食』


 「食べ量 が少ない」「野菜を食べない」「噛まずに早食い」「落ち着いて食べることができない」などなど、子育て中の子どもの食に関した悩みはつきません。いま、お母さんたちの食べさせようという一生懸命さが、子どもやお母さん自身のストレスになっている気がしてなりません。一生懸命になるほどに、悪循環になり、子ども心は食事に向かなくなります。「食」のことで行き詰ったら、「がんばって食べさせる」という意気込みをちょっと置いて、食べない理由を深く追求しないで、まずは「楽しく食べる」経験を子どもと一緒に共有することを考えてみてください。そうしているうちに、子どもとお母さんの気持ちが和らぎ、親子関係も変化して、食べる時間が楽しくなって悩んでいたことが少しずつよい方向に向かうはずです。 楽しい、おいしい、うれしい、という経験をたくさん子どもの記憶に残す、「食」を通 して心を育てる実践の場として「台所のある教室」をオープンさせています。


「楽しくおいしい」食体験から育つものは?

感覚が育つ

 感覚は幼児期〜小学校低学年の幼少期に育つと言われています。この時期に五感を使った体験は、体の中に刻み込まれていくのですね。つまり、幼少期の食体験は、その人の生涯の食習慣になる「刷り込み」だと言われています。 わたしたちは意識しませんが、見る、聞く、触る、嗅ぐ、味わう、の5つの感覚を通 して周りから情報を取り込んでいます。これらの感覚が発達するほど、手に入る情報量 は増えるわけです。例えば、音楽家はさまざまな音を聞き、鋭く音を聞き分けることができ、料理人はさまざまな味を味わうことで、おいしい味を創りだすことができます。   まだ感覚が発達途上にある幼児は、五感をたくさん使う体験を増やすことで、感覚が育ち、語彙や想像力(創造力)などの知力が育っていくのですね。
 昔の子どもは、戸外でたくさんあそんでいました。お手伝いもさせられて食材に触れる機会があり、しぜんに五感を使う環境で育ってきました。インドア傾向の強い今の子どもたちは、知識は豊富なのですが実際に五感を使う体験が非常に少なくて、感覚が育ちにくい環境にあります。だからこそ、野菜や食材にふれる、買い物体験、料理など、五感を使う経験を意識的に作って、子どもたちの感覚を育てることが必要になってきます。

「おいしい」ってどんなこと?
 わたしたちの舌は、甘味・塩味・酸味・苦味・うま味という5つの味(五原味)を感じます。その中で、生まれたときから感じる味は、甘味・酸味・苦味・うま味で、生後2〜3か月から塩味がわかるようになると考えられています。ですから、子どもが本能的に好むものは、甘味・塩味・うま味で、腐敗したものに多い味の酸味と体に有害な苦味は本能的に拒否をします。これが6歳ぐらいまでのだいたいの子どもの味覚です。 ただ、幼児には、はじめて口にするものを怖いと感じる傾向がありますし、形や色で拒否することもよくあります。まずはそこを理解してください。しかし、子どもは非常に好奇心旺盛です。その好奇心をうまく利用して、いろんな味を味わう経験を増やしていきましょう。

● 離乳食期の食事は、食べ物を舌の奥に入れずに、舌先で味わえるように「おいしいね」「甘いかな?」など言葉を添えて食べさせよう。
● 料理は素材そのものの味がわかるように、薄味を心がけたい。 調味料で食べさせる食事は考えもの。
●  お料理途中でのお味見は、積極的に子ども経験させて。 「わーっ、おいしい!」「どんな感じ?」「あまいね」などと言葉で表現しよう。
●  大人の嫌いな食べものでも、子どもが食べられる機会を!
● 「嫌い」「いや」と言われても気にしないで。少し時間をおいてさりげなくトライしよう。
● 大人が「おいしい!」という姿をたくさん見せよう。

どんなにおいがする?
さわってみようか?

人と食べる楽しさをたくさん経験しよう
 最近、家族別々に違う食事をする「個食」、一人で食事をする「孤食」という言葉をよく耳にします。同じ場で同じ食べ物を食べ、「おいしいね」を共感してこそ、食事であって、個食や孤食は食事ではありませんよね。
食事は、楽しいコミュニケーションタイムです。

子どもが一人で食べるシチュエーションを作らないようにしよう。
● 食事中は口うるさく言わないこと。食事は楽しい雰囲気を大事に!
●  子どもが落ちついて食べられないときは、スナックふうにしたり量 を加減したりして、時間で片付けたり、叱るのではなく違う方法を工夫して。

果物は子どもの前でむいたり切ったりしましょう

食べることは自分で口に入れること
 大人にとって食事は自分で食べることが当たり前ですが、子どもは常に食べものを大人から与えられていますよね。食べ物を大人が口に入れて食べさせる姿をよく見ます。でも食事は、人から与えられるものではありません。だから、子どもがやるクッキングは、「自分で作った」という達成感を感じながら、それを「自分で食べる」喜びは、格別 です。

1歳児=グチャグチャと感触で食べ物を確かめながら自分の口に運ぶ。 ラップおにぎりを作り、手に持たせてギュギュと自分で握って食べる。
2〜3歳児=ラップおにぎりを作ったり、混ぜる、皮をむく、切る、つぶす、する、こねる、盛り付けするなど、お手伝いから始めて、自分で料理するまで、やれることを少しずつ増やしていき、使える道具を1つずつ増やそう。








かんのまきこ
グループこんぺいと代表。幼稚園教諭、出版社勤務を経て「グループこんぺいと」を設立。2005年春、東京都世田谷区等々力に「台所のある幼児教室」をオープン。 現在、親子あそびのアイデア、子どものしつけ、保育者向け食育あそび、など雑誌執筆、書籍の監修、CSTV「キッズステーション」の食育番組「おやこでクッキング」監修、 「台所のある幼児教室」子どもの料理教室「おいしんぼクラス」担当など。
グループこんぺいと著書 
『楽しいうれしい保育・教育現場のための食育』(学研) 『食育なんでもQ&Aセレクト41』『子どもと楽しく食育あそびBEST34&メニュー』(黎明書房)『すぐちょこシアター』(学陽書房)『怒らないしつけのコツ』(学陽書房)『心の保育を考える』(学研)『食育アイデアBOOK』(チャイルド本社)他